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ビジネス用語・コングロマリットとは?言葉の意味やメリット・デメリット、事例を解説

多様な事業展開を行うコングロマリット。その意味やメリット・デメリット、実際の事例を解説します。

企業における事業展開について、競合と差別化を図りさらに飛躍させるために、コングロマリットと呼ばれる形態が用いられることが多いです。コングロマリットは、注目すべき経営形態であり、多角的なビジネスを包括することでより強い企業となることが期待できます。

今回は、コングロマリットについて詳しく説明します。

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この記事の目次

  • コングロマリットを行うメリット・デメリット
  • デメリット2つ
  • 注目されるコングロマリット型M&Aとは
  • コングロマリット型M&Aのデメリット2つ
  • コングロマリット型M&Aをうまく運ぶために
  • 日本国内におけるコングロマリットの実例
  • まとめ
  • コングロマリットについて

    まずは、コングロマリットという言葉が何を意味するのかを説明します。

    コングロマリットとは、異なる業種の企業が提携、もしくは子会社化することで幅広い業種を手掛ける経営形態を指します。これは、双方の企業のノウハウや強みを生かして強い企業に成長することを目的としたものです。統合される業種には一見つながりのないものから、近似値的な性質を持つものまで実に多様です。

    コングロマリットは英語から来ており、集合体のような意味を持つ言葉です。ここから転じて、複数の異業種企業が組み合わさって経営を行う意味として使用されています。

    もともと、事業を多角化するための施策は各企業でも行われていましたが、従来は事業を広範囲にフォローする形態と、1点集中で事業を掘り下げる形態などでした。しかし、コングロマリットはそれらの特徴を複合したものと認識されています。

    ・水平型前述の、事業を広範囲に広げていく形態は水平型と呼ばれ、企業がもともと行っている事業と共通点がある事業を取込んで、水平状に事業展開していくものです。例えば、文房具を作る企業が雑貨の製造に乗り出す、通信会社が映像配信事業も行うなどの形態です。

    これにより、複数の企業が持つ特徴を双方に生かすことができ、多角的経営が実現します。

    ・垂直型垂直型は、比較的近い事業の性質をさらに深く追求していくもので、水平型よりもさらに共通点が多い事業を組み合わせることで、市場でのシェアを獲得することが期待されます。例としては、自動車メーカーが部品製造までをワンストップで行う、筆記用具メーカーが画材を取り扱うなどがこれにあたります。

    広義において、その性質が似通っている事業をさらに充実させ、競合と差をつける狙いがあります。

    ・集中型集中型とは、製造工程や仕組みが似た製品を作る事業で、その分野に集中して新たなニーズを生み出す形態です。精密機器製造メーカーがスマホの製造に参入したり、写真撮影技術を医療機器の画像撮影に生かしたりなどがあげられます。

    この形態は、企業それぞれが持つ技術を集結してさらに質の高い商品を提供できることが強みです。

    ・コングロマリット型以上の3形態では、比較的共通点のある企業同士が組み合わさってそれぞれのノウハウを生かしていますが、コングロマリット型は、ほぼ異業種が手を組むものとなります。

    インターネット事業者が金融業界に算入する、総合小売り業が飲食業を始めるなどがあげられます。前者は、金融業でのあらゆる手続きをネットで完結させる仕組みを作り、後者では小売りのノウハウを生かして飲食業での訴求につなげるなど、既存のノウハウを異業種に生かす考え方です。

    この経営形態は、広範囲に事業を広げる水平型と、ノウハウを突き詰めていく垂直型・集中型のハイブリットといえます。

    ビジネス用語・コングロマリットとは?言葉の意味やメリット・デメリット、事例を解説

    コングロマリット型経営を行うには、主に以下のような方法で双方の企業が手を組みます。

    つまり、既存の企業同士が資本を持ち合って提携するか、どちらか資本の大きな会社が他方の会社の経営権を握るか、いずれかの形が採られます。

    コングロマリットを行うメリット・デメリット

    コングロマリット型を採用して事業展開するにあたって、メリットと同時にデメリットも存在します。以下では、メリット・デメリットそれぞれを紹介します。

    シナジー効果とは、双方の企業がそれぞれの強みを生かして相乗効果を生むことです。コングロマリット型経営形態では、この相乗効果を最大限に生かすことが期待されます。これにより、既存の商品やサービスに新たな価値が付加されるだけではなく、そもそもの事業において新たなノウハウが加わり、事業としての強みも増すでしょう。

    また、異業種のノウハウを共有することは、これまで得られなかった顧客の獲得にもつながるほか、優秀な人材を各業種に置くことで、双方の企業のさらなる成長が見込めます。

    上記のように、コングロマリットでシナジー効果を得て企業の価値が向上することを、コングロマリット・プレミアムと呼びます。

    新たな商品・サービスの導入やこれまでにない価値の付加、優秀な人材の獲得により、売上げが伸びて業績が上がり、その企業自身の価値が上がる効果です。

    異なる事業を展開している場合、一方の業績が振るわず赤字に立たされたとしても、他方の業績が伸びて黒字を出していれば、企業全体のダメージは最小限に抑えられます。つまり、異なる事業をそれぞれに行うことは、経営が傾くのを防ぐリスクヘッジとなりえます。

    特に、市場が目まぐるしく変わる事業では、顧客のニーズが変化し事業戦略が追いつかないことも考えられます。そのような時、他方の事業が危機を食い止めることが可能です。

    コングロマリット型経営形態では、手を組んだ企業それぞれが異なる経営ノウハウを持っています。経営状況に変動が出た場合、それぞれのノウハウを投入して素早い対応が可能です。

    このメリットは、新たな経営戦略の立て直しおよび意思決定も迅速にさせ、いち早く課題の解決に導くことにもつながります。その結果、対応が後手になることを防ぎ、売上げを逃すリスクも回避しやすくなります。

    万が一、コングロマリット型経営形態がうまく軌道に乗らなかった場合、双方の事業が共倒れになるリスクがあります。コングロマリットは、シナジー効果を想定して行うものですが、歯車が狂うと双方の利益を分かち合うことができなくなり、顧客獲得の機会も奪ってしまいかねません。こうして業績の悪化を招き、市場での企業価値が下がれば、おのずと顧客も離れていきます。

    上記のように、双方の企業が相乗効果を生み出せず、利益や顧客の獲得機会を逃して企業価値を下げてしまうことを、コングロマリット・ディスカウントと呼びます。この現象が起きると、株主や投資家による企業への評価が下がり、資金調達も困難になると予想されます。

    もちろん、必ずしもこの現象が起こるわけではありませんが、リスクとして頭に置いておきましょう。

    コングロマリット型経営形態では、異業種企業が複数組み合わさっているため、それぞれの企業間、また事業間で経営戦略や方針が異なり連携が取りづらいです。特に、吸収合併や買収で大企業化した場合、経営者間だけではなく従業員間のコミュニケーションを取るのも難しくなることが考えられます。

    その結果、双方の合意を得た経営戦略が立てづらく意思決定が遅れる点などもデメリットとなります。

    注目されるコングロマリット型M&Aとは

    経営形態の多角化を複合的に行うコングロマリットの仕組みを利用した、M&Aが注目されています。

    M&Aとは、企業の吸収合併・新設合併や買収を総括した言葉です。吸収合併は、企業Aが企業Bを取込んで企業Aとしてひとつの会社になること、新設合併は、企業Aと企業Bが合併して企業Cを起ち上げることです。

    一方、買収は企業A企業Bの資本を買取り、経営権を得ることを指します。M&Aの語源は、英語の「Mergers」=合併、「Acquisitions」=買収が組み合わさったもので、それぞれの頭文字を取って用いられています。

    コングロマリット型経営形態は、従来の多角化経営の複合型ですが、コングロマリット型M&Aも、新たなM&Aの手法として注目されています。特に、近年の傾向として、M&Aは大企業が中小企業の優れた技術力を自社に取り込むために行うことが多いです。

    コングロマリット型M&Aは、大企業側では異業種の技術力で強みを持ち、中小企業側ではその技術を次世代に引き継ぐことを可能にします。

    コングロマリット型M&Aでは、合併・買収した企業側が参入したいと考えていた異業種について、その業種の企業を取込むことで、目的の業種にスムーズに参入することができます。

    また、取込まれた企業には目的の業種に適したノウハウや設備などが備わっているため、新たに人材を育成する手間も省けます。

    買収などで取込まれた企業の技術やノウハウ、設備や人材は、いずれもその業種で培った貴重なものです。これらを、取込んだ企業の事業にうまく生かすことができれば、既存事業の品質強化や販路の拡充も期待できます。

    その結果、取込んだ異業種だけではなく、既存事業のさらなる成長や拡大も狙えます。

    コングロマリット型M&Aでも、双方の企業間や事業間におけるコミュニケーション不足が起きやすいです。これにより、せっかく統合した企業内での統率が取れなくなり、コーポレートガバナンス(企業統治)がうまく機能しなくなります。

    経営方針や意思決定において、迅速な対応が必要とされる社会では、その決定が遅れることで売上げの機会を逃します。(アナジー効果)

    異業種の企業同士が1つの会社となるコングロマリット型M&Aでは、意思疎通の難しさだけではなく、社風の違いや待遇の差に戸惑うケースも出てきます。取込んだ側の企業が持つ社風や待遇などが従業員に合わない時には、せっかくの優秀な人材が社外に流出する恐れがあります。

    コングロマリット型M&Aをうまく進めるために必要なことは、M&Aの知識に長けた第三者を仲介することです。M&A全般にいえることとして、合併・買収する企業について、財務や法的なリスクを把握すること(デューデリジェンス)や、経営・業務・意識の統合を図ること(PMI)の実施は重要です。

    これらの知識は、経営者だけで得られるものではないため、自身だけで進めるのではなく、専門家に相談し指示を仰ぐのが得策です。リスクの少ないM&Aが実現するほか、経営者の手を煩わせることもありません。

    ただし、M&Aは企業の命運を左右するものであるため、専門のコンサルタントなどを選ぶときは、その実績や手腕についてよく調べ、じっくり吟味することが大切です。可能であれば、個人のコンサルタントよりも法人のコンサルティング企業に依頼し、多方面からのアドバイスを受けることをおすすめします。

    日本国内におけるコングロマリットの実例

    日本の大手企業でも、コングロマリット型経営形態を採用して、事業拡大を行っているところが多くあります。 以下では、その成功例をいくつか紹介します。

    とある大手家電メーカーでは、従来のAV機器の製造・販売からさらに事業を拡充し、ゲーム業界やネットワーク事業まで手掛けています。このようなエンタメ系事業のほかに、半導体製造にも乗り出しており、その経営形態はコングロマリット型の典型といえます。近年では、拡充した各業種の業績が高く、本来のAV機器事業を支える形となっています。

    大手自動車メーカーでは、本来は自動車の販売がメインであり、設計や自動車製造、各種部品製造は下請け企業が行っていました。しかし、これらの下請け企業を取込み、事業を一元化することで、精度の高い自動車設計から販売までをワンストップで行うことに成功しています。

    さらに、同業であった自動車メーカーを子会社化し、新興国市場への進出を任せる施策も打ち出しています。

    各種電気機器製造で事業を拡大してきたある企業では、その技術を駆使してIoT(モノのインターネット)プラットフォームを構築し、付随する様々な事業を一元化しています。例えば、情報・制御などのデジタル技術を駆使して製品を作ることで、電気機器の付加価値を上げ、あらゆる問題をデジタルで解決するソリューションを構築しました。

    加えて、自社のデータ収集システム技術を用いたビッグデータとの連携で、多くのサービスに役立てる取組みも進んでいます。

    動画コンテンツ配信をメイン事業として展開してきた企業では、新たにゲームコンテンツやVR技術、映像メディアの提供を行い、エンタメ業界におけるシェアを拡大してきました。それだけではなく、投資や仮想通貨といった金融業にも手を広げているほか、就職や転職を行う人向けの教育事業にも携わっています。

    物流業界でもシェアを広げつつあり、ジャンルが異なるそれぞれの事業を成功させている例です。

    インターネットショッピングのプラットフォーム事業を手掛けている企業では、銀行や証券、電子マネーといった金融業界の進出が目覚ましいです。また、本業であるインターネットでの小売り業では、百貨店やフリマアプリサービスなどを次々に取込むことで、幅広い顧客層を獲得しています。

    その他、旅行業界やスポーツメディア業界など、進出した業種は数多く、特に有名な野球チームやサッカーチームへの出資は、業界を驚かせました。

    まとめ

    コングロマリットは、今後の日本企業のさらなる発展に大きな期待が持たれるものであり、それは企業規模の大小を問いません。多角的な視点を持って、幅広く事業を展開することにはメリットとデメリットがありますが、成功すれば飛躍的な成長が見込める形態がコングロマリットです。

    実際の成功例も参考にし、今後の事業展開の参考にしてみてはいかがでしょうか。

    創業手帳の冊子版では、コングロマリットの詳細やM&Aの知識やコツなどについて、詳しく解説しています。これから事業拡大を考えている方は、ぜひお役立てください。関連記事「経営の多角化」に乗り出す前に経営者が抑えておきたい基礎世界のスポーツ事例から学ぶ!ビジネスに活用できる科学的コーチングと理論的組織づくり【若林氏連載その1】

    (編集:創業手帳編集部)

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