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「政府は留学生を軽んじている」日本語学校、憤る関係者…使命感で踏ん張る現実

日本語学校で学ぶ留学生たち。入国制限のため、他の教室はがらんとしていた=2月25日、福岡市博多区

「政府は留学生を軽んじている」日本語学校、憤る関係者…使命感で踏ん張る現実

 新型コロナウイルスの水際対策が1日から緩和され、留学生など観光目的以外の新規入国が可能になる。学生数が経営状況に直結する日本語学校は受け入れ準備を進めているものの、入国者数には全体で1日5千人の上限があり、学校の定員を満たす時期は見通せない。今後のウイルスの変異も不安定要素。「将来、日本と関わる人材を育てる」との使命感で、ようやく踏ん張っているのが現実だ。 福岡市博多区の「いろは日本語学校」。学生たちは慣れた様子で漢字交じりの文章を書いている。学んでいるのは、ベトナムや韓国、インドなどからの約60人。運営する2校の定員は計430人。空っぽの教室が並び、入国待ちは約350人に上る。永田大樹校長は「期待もあるが、現場は課題山積だ」と話す。 ビザ発給のための手続きに加え、入国後の待機場所の確保、下宿先や家電製品の手配で慌ただしい。学生数の激減で学校を離れた日本語教師をあらためて集める必要もある。

 同じ出身国の学生が後輩に授業や生活のアドバイスをする「慣習」も途絶えており、指導に当たる学校側の負担も大きくなりそうだ。そもそも入国時期すら見通せておらず、永田校長は「さみだれ式にやって来る学生に、どんな授業で対応していけばいいのか」と頭を抱える。 学生側の悩みも深い。政府による規制緩和の時期が分からなかった当時、「ダメならダメと言ってくれ」という悲痛な声も届いた。英国の入学予定者は「日本からは英国に留学生が来ているのに、なぜ私は行けないんだ」と不満を募らせ、とうとう日本に来るのを断念した。 日本語を学んだ外国人は国内外を問わず、何らかの形で将来も日本と関わっていく。「彼らは日本にとって大事な人材であり、入国制限で貴重な時間を無駄にしていることを理解してほしい」。日本語教育の関係者に共通する願いだ。 彼らを必要としているのは未来の日本だけではない。学校には学生たちがアルバイトをしていた事業所から入学の見通しの問い合わせが寄せられている。コンビニのレジ打ち、ホテルや病院のベッドのシーツ洗濯、弁当の調理…。今、日本社会のさまざまな労働現場を彼らが支えている。 入国制限の影響で経営状況が厳しくなり、入学予定者の前払い金でやりくりしている学校もある。福岡県内の学校関係者は憤る。「感染が拡大すればまた入国が規制される不安は拭えない。政府は、留学生も日本語学校も軽んじているとしか思えない」 (森井徹)

留学生の入国制限

 新型コロナウイルスの感染拡大で、政府は2020年12月に全ての外国人の新規入国を一時停止。留学生の入国制限は21年11月8日に緩和されたが、オミクロン株の急拡大で同30日に再び禁止となった。その後、国費留学生などが例外的に入国を許された。留学の在留資格を持つ外国人は22万7844人(21年6月末)で、コロナ禍前の19年末より約11万8千人減少した。

最終更新:西日本新聞