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修理権法で変革される製品メンテナンス市場の業界構造 -JNEWS-

修理権法で変革される製品メンテナンス市場の業界構造

JNEWS会員配信日 2021/11/28

 米Appleは、iPhoneやMac製品の修理を自分で行いたいユーザーに対して、純正部品を供給するプログラム「Apple Self Service Repair」を2022年から開始することを発表した。これまでApple製品の修理については、Apple認定のサービス店舗に持ち込むことが正規のルートとなっていたが、ユーザーのセルフ修理にも対応することになる。

この背景には、消費者の「修理する権利(Right to repair)」が叫ばれるようになり、欧州や米国では、廃棄物を減らす目的からも、メーカーが修理保証期間を延長したり、交換パーツを供給することを義務付ける法律を制定する動きが広がっている。これまでのメーカーは、定期的に製品のモデルチェンジを行う中で、旧モデルのユーザーに対しては「修理」よりも「買い換え」を推奨する、計画的陳腐化のビジネスモデルを展開してきたが、今後はその方針を転換していく必要に迫られている。

欧州では、家電製品や電子デバイスの修理をユーザー自身が行える権利を求めるムーブメントが2010年頃から出ており、2021年に欧州議会は、EU加盟国で製品を販売するメーカーに対して、製造終了から10年間は修理部品の供給を行うことを義務付けるルールを法制化した。EUから離脱した英国でも、同様の法律を2021年7月に施行している。それによって、製品が廃棄されるまでの寿命を延ばすことができ、CO2排出量を削減する効果も期待されている。

修理権法で変革される製品メンテナンス市場の業界構造 -JNEWS-

EUの修理権法は、冷蔵庫、食器洗い機、洗濯機などの家電製品から適用され、メーカー側の準備期間を経て、スマートフォン、タブレット、ノートパソコンなどの電子デバイスにも対象を広げていくことが計画されている。

修理権の法制化は、消費者の世論調査に基づいて実行されており、EU市民の中では、スマートフォンを故障の度に買い換えるのではなく、修理して使いたいと考える人の割合が77%と高い。スマートフォンを10年間は使い続けられるようにする「10 YearSmartphone」という市民運動も起きており、メーカーが10年間の部品供給を保証することや、特別な工具を使わなくても、ユーザー自身がバッテリー交換できるような製品仕様を求めている。

さらに、フランス政府は、洗濯機、ノートパソコン、スマートフォン、テレビモニター、芝刈り機の5分野の製品に対して、修理性能を10段階で評価する「Therepairability index(修理可能性指数)」の公表を計画している。評価の目的は、製品が廃棄されるまでの寿命を延ばし、メーカー側の計画的陳腐化戦略を是正することにある。

■The repairability indexについての公式情報

このように、壊れた物は使い捨てていく風潮を改めて、修理できる物はできるだけ長く使い続けることで、資源を循環させながら経済を回していくことは「サーキュラーエコノミー」と呼ばれており、メーカー企業にとっては、定期的に新製品を買い換えさせていくビジネスモデルの転換を迫られる状況になっている。一方で、中小の修理業者については様々なビジネスチャンスが生まれている。

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