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Jul

稲垣えみ子、電化製品を手放したら「案外、全部ないほうが良かったんです」…山極壽一と“便利な生活”から離れて気づいたことを語る

山極壽一さん、稲垣えみ子さん

稲垣えみ子、電化製品を手放したら「案外、全部ないほうが良かったんです」…山極壽一と“便利な生活”から離れて気づいたことを語る

ミュージシャン、デザイナー、作家、俳優、職人など、異なるフィールドを舞台に活躍する“ふたり”が語らうTOKYO FMの番組「三井ホーム presents キュレーターズ~マイスタイル×ユアスタイル~」。今回のゲストは稲垣えみ子さん(フリーランサー)×山極壽一さん(総合地球環境学研究所所長)。ここでは「便利な生活から離れて気付いたこと」について語り合いました。

フリーランサーとして活動する、アフロヘアがトレードマークの稲垣さん。元・朝日新聞記者で、「週刊朝日」編集部などを経て、朝日新聞論説委員、編集委員を務め、2016年に50歳で退社。以来、夫なし、子なし、冷蔵庫なし、ガス契約なしの”楽しく閉じて行く生活”を模索中です。一方、霊長類学者、ゴリラ研究の第一人者と知られる山極さん。京都大学理学部卒業後、同大学院で博士号取得。京都大学霊長類研究所などを経て同大学教授、京都大学総長に。現在は、地球環境問題を自然科学のほか人文科学・社会科学など総合的な観点から研究する国立研究所「総合地球環境学研究所」で所長を務めています。電気代月200円の超節電生活を送る稲垣さんと、アフリカの森で“野生のゴリラの群れの一員”としてゴリラと共に暮らしていた山極さん。今回が初対面となります。

◆便利な生活から離れてみる

山極:ところで稲垣さん、激しめの節電生活を都会でおこなうのは大変では?稲垣:新聞記者時代に東日本大震災と原発事故が起きて、“このまま原発に頼った社会を継続していくのは厳しいかも”という印象を、みなさん持ったと思うんです。私もその一人で、“とりあえず電気代を半減してみよう”というところから始まって、電子レンジ、掃除機、テレビ、冷蔵庫、洗濯機……と、電化製品を使うのをやめていったんです。決死の覚悟でやってみたら、案外、全部ないほうが良かったんですね。不便と言うよりも、なければそれなりに自分で工夫して、何かやろうとする。それを忘れていたことに気がついて。ちょっと工夫をすれば全部できることがすごく楽しくなって、案外ないほうが快適なことに気づいたんです。山極:僕は、物が全くないアフリカのキャンプ生活と、何でもある日本の生活を行ったり来たりしていたけど、向こうの生活は不便ではなかったですよ。電気はない、冷蔵庫もない、マッチ1本なくても、現地の人は火をおこせる。ただ、火は重要だよね。夜は寒いし、食べるものは焼かないと危ない。熱帯は寄生虫がいっぱいいるし。電気がないからスマホも(使え)ないし。お風呂は川。快適ですよ。でも、日本に帰ってきたら、何でもある生活にスッと戻れる。稲垣:両方とも違和感ないですか?山極:違和感ないな。ただ、1日をうまく組み立てないといけない。一つひとつ時間がかかるから。料理を作らないといけないし、洗濯もしないといけないし、体も洗わないといけない。川に行くと、体を洗う流れで洗濯もして、それを干して、雨が降ってきたら取り込んで……。1日の段取りをつけて過ごさないと、やることがたまってしまう。稲垣:都会だと水道も出るし、そこまでの段取りをしなくても結構やっていけるんですよね。山極:現代の危機は、時間を節約して、自由な時間を作ろうとする方向で動いてきたところにある。みんな自由の時間を持ったけど、持て余して、ずっとネットを見ている。森のなかで暮らしていると、暮らしに必要ないろんなことを、時間を節約して組み立ててから、ゴリラの観察に行く時間を作る。相手がゴリラでなくても人でもいいし、植物でも鳥でもいい。それが楽しみで、歩くことも好きになる。でも、都会は、あらゆるものが便利にできていて、結局、自分が関与して、いろいろなものが変わっていく感触が得られないから、自分が動かされている感触があるんだよね。自分がやっているのでなくて、自分がやらされている感じがあって。それが(原因で)イライラするのではないかな。例えば、洗濯機が動かなくなったり、ガスがつかなくなったりすると、自分1人では直せないので、そこで自分もぷつんと切れてしまったような気がしてしまう。本来アナログである人間が、まるでデジタルに、要するに機械になる。そういう気になってしまうのがつらいなって感じだね。稲垣:そうですね。(TOKYO FMの番組「三井ホーム presents キュレーターズ~マイスタイル×ユアスタイル~」)

最終更新:TOKYO FM+