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すでに5兆円超え「中国ペット市場」、 アリババらテック大手もこぞって参入のワケ |ビジネス+IT

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  • すでに5兆円超え「中国ペット市場」、 アリババらテック大手もこぞって参入のワケ

    中国のペット市場が熱い。世界的には後発だが、過去20年で爆発的成長を遂げ、いまだ関連消費の勢いは衰えない。最近ではアリババなどの有力EC企業が相次いでペットビジネスを強化し、家電の美的、スマホのシャオミといった有力メーカーも、ペット用スマートグッズの開発に参入。スマートカー分野に匹敵する、テック企業の新たな主戦場となり始めた。ペット文化に対してかなり冷淡だった政府のスタンスも、ペットブームを後追いしつつ、変わり始めたように見える。中国経済の命運を握る「個人消費の牽引役」として無視できない存在となりつつあるペット経済の最新動向と、今後の見通しを紹介したい。

    執筆:奥瀬なおみ、編集:岡徳之

    執筆:奥瀬なおみ、編集:岡徳之

    奥瀬なおみ中国語・英語翻訳者兼フリーライターアジアの経済ビジネス情報を配信するNNAの中国本土・香港版編集長を経て、DZHフィナンシャルリサーチ中国株部門の前身、トランスリンクの創業時メンバー。現在は中国のマクロ経済や各業界に関するレポートの作成を手掛けるほか、中国株関連書籍の製作にも携わる。

    <目次>
    1. テック大手の主戦場、自動運転と「ペットビジネス」
    2. ハイテク化加速、ペット家電のIoT化鮮明
    3. 「鼻紋」ソリューション商用化、個体認識システムの新時代到来か?
    4. 犬猫食文化に逆風、まずはハイテク都市の深センが「禁止」
    5. 犬猫「ブラインドボックス」事件も批判一色、ペット文化成熟へ
     中国のペット市場が過熱している。“ペット”という概念が生まれてまだ30年足らず。2000年前後にようやく黎明期を迎えた中国のペット市場は、過去20年間に爆発的成長を遂げ、中国は一気にペット消費大国の一つに躍り出た。今後は安定成長期に入るとの予想とは裏腹に、その勢いは衰えを知らず、ペット経済はコロナ禍を背景に急速に巨大化している。 中国市場の規模は、調査会社iResearchの推計で2020年に5兆円前後。この数字は日本の1兆6000億円(矢野経済研究所)の約3倍だ。それでも、世界最大の米国市場の約11兆円規模(American Pet Products Association)に比べれば半分以下となる。 しかし、中国の総人口が米国の4倍以上であることを考えれば、1人当たり換算では遠くおよばず、この先、市場の拡大余地は大きいとも言える。同時に、ペット家電のハイテク化やサービスの拡充を受けた市場の高付加価値化も、この先さらに加速しそうだ。 一方で、中国は伝統的に、犬猫食の慣習が続いてきた国でもある。ペットとしての犬や猫に対する愛情と、家畜、食材としてあつかう旧来からの意識がどう両立しているのか不思議にも思えるが、ここ数年は社会全体が「動物愛護」や「ペット文化」寄りにシフトしている。 まず先行したのは都市部の若者が牽引したペットブーム。これに伴いペット経済が急拡大し、数年前まで否定的だった国営メディアや政府当局も、ペット文化に寄り添い始めた印象を受ける。 現時点では、動物関連の法規は主に公共衛生面からの視点であり、ペット社会の実情に追いついていないとの指摘がある。この先、愛護法や行政面の体制がさらに整備されれば、ペット社会はより成熟化し、多層的な広がりを見せることになりそうだ。

    テック大手の主戦場、自動運転と「ペットビジネス」

     中国でペット市場の誕生時期が遅れたのは、毛沢東の文化大革命(1966~76年)時代に、ペット飼育がブルジョアの証として糾弾されたことが一因だ。その後の狂犬病の流行もあり、多くの都市が1990年代前半まで犬の飼育を禁止。その後も高額な登録料の支払いを条件に、限定的に認めるという時期が数年続いた。 ただ、世界的に見て後発でも、解禁以降の市場の拡大ペースはすさまじい。犬猫を筆頭とする都市部のペット飼育頭数は20年時点で1億匹を突破。わずか20年そこそこで約5兆円規模ともいわれる巨大市場が誕生した。 最近のニュースを見ても、ペット消費の勢いは鮮明だ。ネット通販大手のJD.com(京東商城)が主催した今年6月のネットセールイベント「618」では、1~18日のセール期間中に、ペット用スマート製品の売り上げが前年同期の6倍、免疫強化サプリが5倍、輸入キャットフードが29倍、フレッシュミート類が30倍を記録したという。 iResearchは「過去10年の急成長期を経て、ペット市場は向こう10年間、安定成長期に入る」と見て、まずは2020~23年に年率平均14%の拡大を見込むが(2023年に7兆6000億円規模)、上記JD.comのように、個別に伝わる情報はいまだ急成長中といった勢い。ペットは依然、ホットなビジネス分野だ。 新たなチャンスを掴むことに長けた巨大ネット企業や有力メーカーはこの機を逃さず、攻勢をかけている。 前出のJD.comは今年5月、向こう1年で全方位型かつオフライン・オンライン一体型のペット向けサービスネットワークを構築するとの戦略を発表。アリババ・グループの天猫(Tmall)も、ペット専門プラットフォームを向こう3年で “第2の「天猫コスメ」”に育てる計画を明らかにした。わずか2年でGMV(流通取引総額)を倍増させた有力コスメ・プラットフォームに続く存在と位置づける。 このほか、家電の美的(ミデア)、スマホの小米(シャオミ)などの有力メーカーも参入し、ペット市場はすでに、業種を跨いだ大手企業の新たな主戦場といった様相。中国の有力テック企業が大挙して押し寄せている分野といえば、もっぱら自動運転技術などのスマートカー開発ビジネスだが、ペットビジネスも決して負けてはいないのだ。 既存企業の参入だけでなく、起業も相次いでいる模様。中国のペット用品関連会社の数は2019年に、実に15万社増加。2020年にはさらに12万社増えたという(企業データバンクの天眼査アプリ調べ)。 スマート家電の漏電事故といったトラブルも決して少なくないが、これは中国のお約束。大手の参入もあり、段階的に粗悪品の淘汰と全体的な技術アップグレードが進む可能性が高い。

    ハイテク化加速、ペット家電のIoT化鮮明

     最近のペット家電といえば、電動のウォーターサーバーやマッサージ機から、犬や猫を入れる箱型のドライヤー、ハイテクトイレまで多種多様だが、遠隔操作可能なIoT化がトレンドだ。 サービス分野に目を向けると、トリミングやホテル、旅行、医療、葬儀はもちろん、ペット用のフードデリバリーといった日本ではあまり見かけないサービスもある。出前の客単価が、人間用よりはるかに高額ということで話題だ。 中国では既婚、未婚を問わず、ペットの飼い主の多くがZ世代、ミレニアル世代であるためか、スマートデバイスやサービスを通じたペットとのコミュニケーションに対して関心が深い。 日本でも、留守番中のペットの姿を確認し、話しかけ、おやつをあげることができる見守りカメラ「FURBO」(ファーボ)などが人気だが、中国でもそれは同じだ。 ペットに自分の姿を見せることができるうえに、車輪つきの機械を遠隔操作し、ペットと一緒に遊ばせることができる製品もある。猫用には遠隔操作の猫じゃらしも登場した。 トイレも進化中だ。自動お掃除機能はもちろん、飼い主のスマホアプリ上で排便データをグラフ化し、健康管理する製品も登場している。多頭飼育の猫たちも体重で識別し、個別にデータを記録することができる。 ウェアラブルデバイスでは、呼吸数や心拍数を通じた健康管理が可能。散歩中に犬が突然歩かなくなった場合には、体調不良か、単に歩きたくなくなっただけなのか、判定できる製品もあるという。迷子を防ぐためのトラッカー機能やGPS測位機能などは必須だ。【次ページ】「鼻紋」ソリューション商用化、個体認識システムの新時代到来か?

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