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新型コロナの流行以来、米メジャーゲームイベントとして初めて開催された“PAX”とは? 日本であまり語られないゲーマー天国な内容を紹介

アメリカ現地時間の2021年9月3日から6日にかけて、ワシントン州シアトルでゲームイベント“PAX West”が行われた。

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新型コロナウィルスの流行以来、米メジャーゲームイベントでは初の復活開催となったPAX West。通常よりも規模を縮小しつつ、ワクチン証明やPCR検査等の提示、および会場内でのマスク必須などのレギュレーションで行われた今回の会場の様子については、初日にリポートをお届けした。

しかし、PAXがどんなイベントなのかは以前にも記事で紹介したことがあるのだが、最後にちゃんと書いたのはなんと7年前の“PAX East 2014”。そりゃもう覚えてる人もあんまりいないと思うので、本稿ではあらためてPAXがどんなイベントなのかをお伝えしよう。

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  • 100人いれば100通りの遊び方がある場所
  • ゲーマー向けWeb漫画のイベントだったものが、業界注目のイベントに急成長

    PAX、正式名称“ペニー・アーケード・エクスポ”の発端は、“タイコ”ことジェリー・ホルキンス氏と“ゲイブ”ことマイク・クラフリク氏によるWeb漫画“ペニー・アーケード”にある。

    アメリカのゲーマーを中心に人気を博した同コンビが主催するイベントとして2004年にシアトルで第1回が行われて以降、PAXは回を重ねるごとに急成長を遂げ、熱心なゲーマーが集まるイベントとして次第にゲームメーカーからの注目も集めるように。

    なかでも『ボーダーランズ』シリーズなどで知られるGearbox Softwareなどは、新作発表などのほとんどをPAXの大シアターでの講演で行っていたぐらいだし、当時発売前の『ボーダーランズ プリシークエル』のダウンロードコードを参加者全員に配ったことすらある(ただし今年はGearboxをはじめとする大手メーカーがほとんど回避したのは初日のリポートでお伝えしたとおり)。

    そしてPAXは東海岸のボストンで行うPAX Eastや、南部テキサスのサンアントニオで行うPAX South、オーストラリアのメルボルンで行うPAX Australiaなど、場所を変えて年に数回行われるようにまでになっている。

    ちなみに今回PAX Westがアメリカで新型コロナウィルスの流行以来初めて行われたメジャーゲームイベントとなったが、新型コロナウィルスのロックダウンなどが始まる前に行われた最後のメジャーゲームイベントも2020年2月末のPAX Eastだ。

    ゲーマー中心主義で公式・非公式ごちゃまぜのカオス感

    ではこのイベントではどんな楽しみ方ができるのか? さっそくその内容を掘り下げていこう。

    ちなみにPAXにおいて、個別に各広報と連絡を取って事前にアポイントを確保していない限り、プレスルームと初日の1時間の優先入場以外にプレスのメリットはほぼ皆無。記者も注目のデモや講演にありつくために何時間も並んだことが普通にある。これは圧倒的にゲーマーのためのイベントなのだ。

    新型コロナの流行以来、米メジャーゲームイベントとして初めて開催された“PAX”とは? 日本であまり語られないゲーマー天国な内容を紹介

    まずは広大な出展フロアーが目玉のひとつであるのは間違いない。例年であれば任天堂・ソニー・インタラクティブエンタテインメント、マイクロソフトのプラットフォーム3社にくわえ、時によってはPCゲーム界の大メーカーValveなども登場し、最新ゲームの試遊台をズラッと並べる。

    それに加えて、中小のゲームスタジオのブースや、インディーゲーム開発者によるブースが所狭しと並ぶのが恒例。なんせ筋金入りのゲーマーが集まるもので、インディーのブースもおまけというレベルではなく、なかなか通路を進めないレベルになるまで混雑する。

    また物販なども出展フロアーの中にあり、ゲームネタのTシャツ屋はもちろん、地方のレトロゲーム屋さんがストックを山程持ってきていたり、ボードゲーム用のダイスだけを扱う専門店がズラッと並んでいたりもする(そう、ビデオゲームだけでなくボードゲームやカードゲームもアリなのだ)。

    近年になって一般入場を限定的に解禁したE3と異なり、TGSと同じように一般入場がメインというのも大きい。体力とやる気さえあれば、連日展示フロアーだけで遊び倒せる……が、それだけじゃない。ここからがPAXの真髄だ。

    会場の中や周辺のホテルなどの大会議室やシアターを使った講演も重要な出し物のひとつだ。

    講演には公式・非公式のものがあり、公式では特にクリエイターが自ら出演して自作について振り返ったり、新発表を行ったりするものが人気。終演後には撮影&サイン会になだれ込むことも多い。アメリカの濃いファンへの絶好のプロモーション機会になることもあって、『ファイナルファンタジー』関連や、『ニーア』組、プラチナゲームズなど、日本から講演者が呼ばれることもしばしば。

    しかしそれだけでなく、在野のゲーム通やニッチなメディアが企画するメーカー非公式な講演も並列に行われるのがポイント。過去に取材したものでは、日本のクソゲーの歴史を振り返ったり、レアなゲームアイテムの鑑定団企画が始まったり、アプリマーケットにひっそりと眠るバカゲー特集が組まれたり。

    ほかにも「ホラーゲームにおけるストーリーテリングについて」とか「eスポーツにおけるメンタルヘルスの問題」といった真面目な研究披露や討論が行われたかと思えば、「1時間でエミュレーター機を自作する方法」とか「スピードランナー(早解きプレイヤー)が語る“ポケモンを全部捕まえる方法”」といったような、現地ゲーマーが気になるんだろうけど公式では100%無理そうなネタも。

    というわけで「PAXにしかない」ものはいろいろとあるのだが、逆にわざわざ数百ドルだか1000ドルだかかけてやってきて、「家でもできる」事を選ぶ猛者たちもいる。しかもたくさん。

    PAX会場にはゲーム機とゲームの貸し出しサービスがあり、一個前の世代のハードとレトロゲームの双方が存在。またPCも同様に貸し出しサービスや自前のPCを設置できるBYOCと呼ばれるコーナーがあるし、ボードゲームもある。

    権利的な是非は日本とは法律も異なることだしこの際置いておくとして、それ以前にぶっちゃけ「せっかくPAXに来たんだし、それは家で遊べばよくない?」と思わないこともないのだが、これらを利用する人は実際めちゃくちゃ多い。

    PAXには家族での来場者も多いので、“お父さんがどうしても行きたい奴に行ってる間にお母さんが子供と一緒にプレイ”とか、“お母さんが物販並んでる間にお父さんが子供に古き良きモータルコンバットを教え込む”とか、“PAXぐらいでしか会えない遠方のゲーマー友達とスマブラ”といったケースはわかる。

    でも平然と『天穂のサクナヒメ』などのソロゲームをひとりで遊ぶ人もいる。っていうかなんなら、会場のソファーで延々とSwitch(ひと昔前はニンテンドー3DS)を取り出して遊んでる人もいる。

    確かに、市場に従って最新ゲームに時間を使わなきゃいけないなんて法はない。ゲーマーとして好きに遊べばいいのである。自由だ。さすが自由の国だ(そういう意味ではない)。

    会場内の各所では、野良の非公式ゲーム大会も行われる。もちろん『ストリートファイターV』や『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』や『鉄拳7』や『GUILTY GEAR -STRIVE-』、『モータルコンバット11』といった今どきのタイトルもあるのだが、eスポーツ的な華々しい頂点を決めるものではなく、高圧洗浄シム『PowerWash Simulator』大会や『ビューティフル塊魂』大会と並列な、一般参加の対戦会だ。

    また、これは大会というよりレトロゲームコーナーの延長に近いが、PAXでは毎年『鉄騎大戦』の対戦ができるコーナーがなぜか存在する。

    記者がTwitterに写真を投稿したところ「うわ、今日のチケットしかないのに行くの忘れた!」というコメントをもらったのだが、どうやら海外の『鉄騎』マニアには有名らしい。その人も自宅でプレイできるにも関わらずPAXで遊びたかったとのことで、こういったところからも“PAXのコミュニティの中で遊ぶ”意義が感じられる。

    100人いれば100通りの遊び方がある場所

    というわけでPAXは単なる新作発表の場ではなく、ゲーマーが興味のあるあらゆるものが集まる場所であり、イベントそのものが大きなコミュニティとして機能している。

    今回の対策が安全確保に十分なものだったかは今後の検証や議論を待つとして、少なくとも依然新型コロナウィルスの懸念がありながらも再開に挑む意義のあるイベントだと思う。早くゲーマーと関係者が以前のように安心して過ごせるイベントとして完全復活できるよう願いたい。