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SPUR | 日本発信のファッショントレンド情報サイト 避難の日から現状まで。ウクライナのデザイナー、クセニア・シュナイダーからの便り

乗松 :ロシア軍によるキエフ爆撃が始まった時、どうしていましたか?

クセニア : 自宅で夫、娘とともに眠りについていた2月23日の夜。夢うつつで朦朧としていた中、飛行機が家の上空を飛ぶのが聞こえると同時に、電話のベルが鳴りました。母からです。(翌朝)5時だったので、何かとても悪いニュースに違いないと覚悟して電話をとりました。でもまさか「戦争が始まって、私たちは爆撃されている」という言葉を聞くなんて! 私たちは飛び起き、窓際へ。外を見ると、複数の家族がスーツケースを車に積み、パーキングを出ようとしているのが見えました。最悪のシナリオに備えて、既に準備していた人たちもいたのです。私たちと違って。もちろん、ロシアがウクライナ攻撃を企てていることはニュースから知っていましたが、こんなことが実際に起きるなんて信じられない、いや信じたくなかったんです。そうこうするうちに、爆発の轟音が聞こえました。今までに聞いたことのないような音。想像してみて下さい、この世でもっとも嫌な音、恐怖心を掻き立てる音です。そして何もできないという絶望感に襲われました。本当に胸が張り裂けそうで。この騒音で娘が目を覚ましましたが、夫とは、娘を怖がらせないように少しずつ現状を説明しようと話し合いました。娘は学校に行かなくていいのを喜んでいましたが、一晩防空壕で過ごした後、私たちは西ウクライナに安全な場所を見つけることに決めました。

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乗松: 今はどこにいて、どんな日常を過ごしていますか?

クセニア :国境を越えて安全な場所に落ち着くのに、3日間かかりました。今は娘と一緒にブダペストにいます。ファッション界の友人が無料のアパートを手配してくれたので、ここを姉と彼女の息子と一緒にシェアしています。ここでは子供たちを毎日公園に連れて行き、私と同じように避難している他のウクライナ人の女性たちと交流して助け合っています。掃除や料理をしてリラックスを心がける一方、毎日何かしら仕事はあります。(他企業との)コラボの可能性について話し合ったりして、将来に備えようとしています。もちろん今後の状況によりますが…。

乗松 : パートナー(ブランドのアート・ディレククションを手がけるグラフィック・デザイナー、アントン・シュナイダー)はロシア人ですよね。複雑な状況の中、どう対応していますか?

クセニア : 夫と意見が食い違うことはありません。彼はとてもサポートしてくれています。