21

Jun

「下手したら死にます」高さ27m、ハイダイビングに魅せられた男 危険すぎるマイナー競技を選んだ理由

福井県の東尋坊でハイダイビングの練習をする荒田恭兵さん=2020年8月、荒田さん提供

 「下手したら死にます」高さ27m、ハイダイビングに魅せられた男 危険すぎるマイナー競技を選んだ理由

ビルの9階に相当する高さから水中に飛び込む水泳競技「ハイダイビング」を知っていますか? 世界水泳の種目になっているものの、「ほぼゼロ」という国内での知名度を上げたいと活動している選手がいます。入水時の衝撃で九死に一生を得た経験があり、少なからずリスクもある競技ですが、その魅力とはいったい……? SNSでも競技について発信する選手に話を聞きました。(朝日新聞・富山総局 竹田和博)【画像はこちら】「掃除機に吸い込まれる」ようなハイダイビング その競技の魅力とは?

掃除機に吸い込まれるように

ハワイの王や戦士が勇気を示すために崖から飛び込んだことが起源とされるハイダイビング。元々、高飛び込みの選手だった荒田恭兵さん(25)=富山県高岡市=は4年前、この世界に足を踏み入れた。高さ27メートルから時速約90キロで飛び込み、体に回転やひねりを加えて美しさを競う。「デカい掃除機に吸い込まれる」ようにまっすぐ水の中へ。この間、約3秒。高さ10メートルから頭で飛び込む高飛び込みに対し、ハイダイビングはその危険さゆえ足から入水する。「ちょっと入水がずれただけでも大けがをする可能性があり、下手したら死にます。かと言って、怖さで体が硬くなったらいい演技ができない。その緊張感があるから集中力も高まります」演技を終えて陸にあがると、観客や他の選手から万雷の拍手で出迎えられる。「高飛び込みの比じゃない心地よさがあって、『生きてる』っていう実感を持てる」過去に、入水の際に姿勢を崩してひざの靱帯を痛めたことも、衝撃で気を失って水中に沈んだこともある。飛び込み台に立つたび怖さを感じるし、手には汗をかく。でも、この快感があるからやめられない。

「人と違うことがしたかった」

飛び込みを始めたのは、小学4年の時。「誰もやってない。目立てると思った」と荒田さん。高校3年の高校総体では高飛び込みで3位になり、日本体育大学4年だった2017年にはシンクロ高飛び込みで日本選手権を制した。ただ、目標だった国際大会への出場はかなわなかった。卒業を前に岐路に立つ。現役を続けて世界を目指すか、就職か。「どっちも誰かが歩んだ道。面白くない。人と違うことがしたかった」 頭に浮かんだのが、一度やってみたいと思っていたハイダイビングだった。16年、レッドブルが主催する世界大会が国内で開かれたが、日本人選手は出ていなかった。「誰もやってない。土俵を変えて勝負したくなった」