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愛犬家におすすめ!10万円で買えるルンバの自動ゴミ収集モデル「i3+」の使い勝手を徹底検証

「ルンバ」シリーズといえば、ロボット掃除機の代名詞ともいえるブランド。アイロボットジャパンはこのルンバシリーズに「ルンバi3」と「ルンバi3+」(以下、i3/i3+)の新シリーズをラインナップした。製品発表時に注目が集まったのは、クリーンベースを標準付属しながらも9万9800円(税込)と10万円を切る価格設定となったi3+の存在だ。とはいえ、価格がリーズナブルになると気になるのがその性能。そこで、ここではi3+を実際に自宅で使用し、じっくり性能をチェックしてみた。

デザイン一新! 部屋になじみ傷も目立たず使いやすい

ルンバシリーズは大きくわけて4つのシリーズがある。掃除履歴の地図作成機能を搭載しない「600シリーズ」と「eシリーズ」、プレミアムモデルとなる「iシリーズ」。そして、アイロボットの最高性能を詰め込んだフラッグシップモデルの「sシリーズ」だ。i3は名前の通りプレミアムモデルとなるiシリーズ。現在、iシリーズには「ルンバi7/i7+」があるが、i3/i3+はこのi7の同シリーズ下位モデルとなる。

i3+を手に取ってまず驚くのがデザイン。i3は天面全体がマット調でロゴの配置も控えめ。とにかく全体的にシックな印象だ。リング状に布のようなファブリックテクスチャーを採用し、さらに色もパキッとした真っ黒ではなく濃いグレーにすることで全体的に柔らかいイメージ。ファブリックテクスチャーで個性的なのに主張しすぎないインテリアになじみやすいデザインだ。

ロボット掃除機は部屋中を動くため、光沢のある樹脂素材だと意外に傷が目立つが、マットになったことで傷が目立たなく、さらに指紋が目立たなくなった点も評価できる。

手間の軽減を求めるなら絶対にクリーンベースモデルがオススメ

ところで、ロボット掃除機は本体がコンパクトであるほど小回りがきく。このため、ダストボックスは一般の掃除機より小さめ。それゆえ掃除のたびに空にする必要がある。ロボット掃除機といえば「自動で掃除」するのが特徴でありながら、掃除のたびにメンテナンスが必要なのは面倒と感じている人も多いだろう。ルンバも残念ながら毎回ダストボックスを空にする手間が必要だ。

抜け毛の多い犬がいる我が家では、朝掃除をしても写真のように夕方にはダストボックスが満杯になる。ダストボックスのケアは1回1回はそこまで面倒ではないのだが、積み重なると意外に「やりたくない作業」だ。

この面倒な手間を低減してくれるのが、2019年より登場したクリーンベースの存在。クリーンベースとは、充電台に自動ゴミ収集機能を搭載した製品のことで、ロボット掃除機が充電台に帰還するたびにゴミを自動的にクリーンベースに内蔵したAllergenLock紙パックに吸い上げてくれる。これにより最大60日ダストボックスのケアは不要、本当の意味で「手間のいらないロボット掃除機」となった。

クリーンベースに内蔵されているAllergenLock紙パックは4層のアレルギーブロック素材から作られており、花粉、カビ、ダニを99%補足してくれる優れもの。交換も簡単でクリーンベース上部のフタを開いて、紙バックのプラスチックハンドル部分をつまんで引っ張り出すだけ。紙バッグを引っ張り出すと同時にゴミ吸引口が自然に閉じるようになっており、ホコリが空気中に舞わない工夫もされている。ホコリなどにアレルギーがある家族がいる我が家では非常にありがたい仕組みだ。ちなみに、交換用紙パックは3枚で税抜1980円(アイロボット直販価格)。一枚を数か月利用できると思えば、そこまで高い値段ではない。

コスパ良好なロボット掃除機の清掃能力はどうなの?

いままでクリーンベースが標準付属したモデルは、いちばん安い「ルンバi7+」で14万2868円(直販価格/税込)だった。一方、今回発売されたi3+は10万円以下と手が届きやすい価格帯。そこで気になるのがi3シリーズの清掃能力だ。結論からいえば、清掃能力はプレミアムモデルのi7とほぼ変わりなく、かなり優秀だ。

愛犬家におすすめ!10万円で買えるルンバの自動ゴミ収集モデル「i3+」の使い勝手を徹底検証

ロボット掃除機の掃除能力の優劣がハッキリとわかるのはカーペットやラグなどの床材。非力なロボット掃除機でもフローリングの掃除はそこそこということが多いのだが、カーペットを掃除させるとゴミがほとんど取れないことが多い。我が家はペットがいるため、足を保護するためにリビングなどの共有部屋はすべてカーペット。このため、ロボット掃除機にはそれなりの清掃能力を求めている。

そして、カーペットやラグで、断然取りにくいものといえば髪の毛やペットの抜け毛。とくに、何度も踏まれて毛足に絡みついた毛は除去しにくい。そこで、タイルカーペットを1週間床に放置し、一枚だけi3の掃除経路に置いて掃除能力をチェックした。結果は以下の通り、1〜3cmほどの短い髪が残っている部分もあるが、長い髪はほぼ完全に除去できている。

写真左が掃除前、右が一度掃除後のタイルカーペット。短い髪は一部残っているが、目立つ髪はほぼ除去。フワフワとした犬の抜け毛もほぼ掃除できている

ロングヘアの家族がいる家庭で問題となるのがブラシに絡まる髪の毛だ。とくに、毛を植毛したタイプの一般的なブラシだと毛の間に髪が絡まり、掃除あとの「掃除機の掃除」が大変になりがち。i3はゴム製の2本のブラシを使った「AeroForce 3 段階クリーニングシステム」を採用。高い掃除性能ながらゴムブラシなので毛が絡まりにくい。実際に掃除が終わった後のi3本体裏を見てみると、ブラシには髪の毛が1本ずつしか絡まっていない。むしろ髪が絡まりやすいのは壁際のゴミを掻き出すエッジクリーニングブラシだった。エッジクリーニングブラシは取り外しにドライバーが必要なので、このあたりは今後メンテナンス性が向上することを期待したい。

掃除後のi3裏側。ブラシにはほとんど髪の毛が絡まっていない

前述したAeroForce 3 段階クリーニングシステムとは、1本目のゴムブラシがゴミを浮き上がらせてかき出し、2本目のブラシが逆回転することでブラシが床に密着してゴミを効率良く浮かせて掃除するというルンバ独自の掃除システム。このAeroForce 3 段階クリーニングシステムがどれだけ優秀か、色の濃いカーペットを使って、ペットの飼い主の悩みでもある「抜け毛」と「白い細かな砂」を使って掃除能力をチェックしてみた。結果は以下の通り。

写真左が掃除前、右が一度掃除後のタイルカーペット。抜け毛は完全ではないが一度の掃除で9割は除去。砂はほぼ除去できている

犬の抜け毛はすべてとは言えないが、白い砂はほぼ掃除できている。写真は一度掃除しただけの状態だが、この後3回掃除を繰り返したことで抜け毛もほぼ完全に除去できた。1回で完全に掃除ができるとはいえないが、ロボット掃除機を定期的に利用する家庭なら、ほとんどの家庭で満足できる結果だと感じる。

価格差最大の違いはマッピング方式

ところで、i7+とi3+の掃除性能がほぼ変わらないなら、両者の価格差はなんなのか?と疑問に思った人もいるのではないだろうか? 最大の違いはマッピングの仕様。i7とフラッグシップモデルのs9+は、家の間取りや家具の配置などを記憶し、掃除すればするほど学習する「Imprintスマートマッピング」を採用している。対してi3はスマートフォンと連携して同じ専用アプリ「iRobot HOME」対応ではあるものの、掃除のたびにマップを作り直す仕様だ。

専用アプリ「iRobot HOME」ホーム画面

i3も毎回部屋の地図を作るが、1回1回データを破棄して掃除のたびに新しくマッピングし直す

i7やs9+のように地図を保存して学習するメリットは様々ある。なかでもユーザーにとって一番大きいメリットは、部屋を記憶することによる「進入禁止エリア」や「掃除エリア」の指定だろう。たとえば、i7やs9+は作成した地図から「食事のあとはダイニングテーブルの下を掃除する」といったスケジュールを作ったり、「台所が汚れたから今すぐに台所だけを掃除する」といった細かな指定ができた。また、アプリから簡単に進入禁止エリアを指定できたため「犬の水飲み場付近は掃除しない」「コードが多いエリアを進入禁止にする」といった細かな指示ができたが、i3はこれらの機能は利用できない。

逆に、部屋を覚える以外のほとんどの機能は利用可能。スケジュール機能のほか、床拭きロボット「ブラーバ」との連携や、スマートスピーカーやスマートウォッチとの連携による音声操作などにはもちろん対応している。

もちろん予算が許せばs9+が買いたいが……

筆者は家電ライターのため、じつはi7やs9+も試用したことがある。その体験から、部屋を学習する機能の便利さは身にしみてわかっている。とはいえ「進入禁止エリア」や「掃除エリア」の機能に15万円近くを即座に出せるかといえば我が家は難しい。ちなみに、フラッグシップモデルであるs9+は、部屋を学習する機能のほか、iシリーズの約4倍の吸引力を持っている。このため、犬を飼っていて抜け毛に困っており、さらに予算に糸目をつけないなら間違いなくs9+をオススメする。とはいえs9+は直販価格が税込18万6780円とさらに気合いが必要な価格帯だ。

i3+はエリア指定こそできないものの、クリーンベース付属で掃除ごとの手間がなく、さらにルンバiシリーズならではの必要充分な掃除力がある。今回i3+が登場したことで、ルンバを選択する際に、価格と機能のバランスを考えながら選べる選択肢が増えた。この点に関しては純粋に喜ばしいことだと感じた。

取材・文/倉本 春