31

Dec

Pixel Cレビュー:ハイブリッド端末にAndroid OSは機能しきれていない

ハードからソフトまで100%グーグルメイドなAndroid高級タブレット「Pixel C」がアメリカで発売されました。現在日本での発売は未定ですが、グーグルが新しく打ち出してきた新ラインの製品はどんなものかと気になるところでしょう。米ギズモードのDarren Orf氏が実際にPixcel Cを1週間程度使用してみてのロングレビューをお届けします。

***

グーグルはきっと、インターネットができて持ち運べる"板"以上のものを作ろうとしたのでしょう。タブレットのさらなる進化の活路を求めてか、グーグルは(競合他社のように)別売りのキーボードと使うタブレットを開発しました。今回Pixel Cを使い続けてみましたが、「ちょっと便利」なだけでは、この強気な値段を正当化するのは難しいと感じました。エンドレスCandy Crush、エンドレスNetflixにちょうど良さそうだけど。

Pixel Cは、Android 6.0 Marshmallow(マシュマロ)を搭載する、10.2インチのタブレットです。HTCやSamsungといったハードウェアメーカーの力を借りずに、ハードウェアからOSまで100%グーグルの初のプロダクトです。32GBモデルで500ドル(約6万円)、オプションのBluetoothキーボードは150ドル(約1万8千円)です。

Pixel Cは、次世代のタブレットはどこに行くべきか?というグーグルのビジョンを示しているものでしょう。Pixel Cは、仕事など生産的な活動にも使えて、持ち運べるインターネットのスクリーン(人々にタブレットを買わせる動機ともなる)という側面をひとつにまとめたようなもの。デザインは、シンプルで美しいChromebook Pixelの系統を引き継いでいますが、中身はNexusなどのAndroidタブレットです。そしてマグネットでピタッと接続するキーボードが付属しています。タブレット+キーボードを組み合わせる製品は、すでにアップルのiPad ProやマイクロソフトのSurfaceシリーズがありますが、対抗馬としてはイマイチ力不足感が否めません。

Chromebook Pixelのラインナップからしても、シンプルでソリッドで高級感のあるアルミ筐体はきっと多くの人が気に入ると思います。世の中に出ているその他のガジェットとは違って、外面に製品ロゴなどのブランディング要素がほとんどないのも良いですね。見た目からこれがグーグル製品であると判断するヒントは、タブレットの背面にあるグーグルのロゴカラーが光るバー。タブレットを閉じている時に、このバーをタップするとバッテリー残量に応じて光り輝きます。

Pixel Cは、iPad Air 2やサムスンのGalaxy Tab S2といった競合タブレット製品と比較すると大きく重いですね。約900グラムの重量は、軽量を売りにしているラップトップとほぼ同じ重さです。(キーボードはさておき)Pixel Cは、動画を見るには最高の端末です。左右に備わるデュアルスピーカー(縦置きにすると上下になる)は、バランスの良い音環境を提供し、Netflixを観ている時や音楽を聴いている時に実感するでしょう。個人的にはiPad Proの4つのスピーカーのセッティングの方が若干好きですが、でもPixel Cのマグネットのキーボードスタンドで自立させられるのは悪くありません。

2560×1800ピクセルの有機ディスプレイは現在のタブレット史上最高の解像度で、これはとびきり美しいです。しかしながらPixcel Cのディスプレイは光をかなり反射するので、少しでも光がディスプレイに当たるだけで不快に感じるかもしれません。(ちなみにアップルは、この問題を解決するためにiPadに2014年から反射防止コーティングを施しています)さらにPixel Cには、3GBのRAM、Nvidia Tegra X1プロセッサーを搭載、つまりヘビーなAndroidのゲームをサクサクでプレイし放題です。Asphalt 8やGodfireといったゲームで試してみましたが、全く問題はありませんでした。

さて、キーボードの件について言及していきましょう。一般的なBluetoothキーボードとデザインが異なる点としては、Pixel本体の下部がマグネットのヒンジでかっちり固定され、90度の角度で完全に直立するところですね。キーボードの筐体は、本体と同様アルミ製なので、デザインはとてもマッチします。さらに取り外し可能なキーボードカバーとしても使うことができます。

キーボードを閉じた状態では、マグネットの接着が弱くなり圧をかけると動いてしまいますが、一度キーボードスタンドとして立てると、非常に強い力でくっつきます。キーボードと本体をパチっとはめると強力なマグネットで固定され、そして自動的にBluetoothでペアリングされ、例え本体を逆さまに持っても重力に屈して落ちることはありません。家やオフィスなどでキーボードを掴んでPixel Cを持ち歩いていると、これは仕事用のマシンなんだと感じます。しかし実際に使ってみると、印象は変わってくるのです…。

Pixel Cは、誰でも使いやすい一般的なマシンではありません。実際に使ってみると良いところもたくさんあるのですが、650ドルもするキーボード装着型のAndroidタブレットに、用途を見出すのに苦労する人も多そうです。最大の障害は、そもそもAndroidは、大きなスクリーンで何か生産的なことをするために設計されていないこと。例えば、2つのアプリケーションを同時に左右にスプリット表示させることができません。(将来的には、きっと2016年にはその機能も備わると思いますが)アップル、ましてはサムスンですら、タブレットを作業用途にするためのツールを標準搭載しているのに、Androidに関しては出遅れ感があります。10インチのフルスクリーンでAndroidのアプリを使うと、無駄なスペースがたくさんあることが気になります。Google Hangoutをスクリーンの3分の1で起動させて、残りのスペースでGmailを起動させる…ということが不可能なのです。

今週から僕はPxel Cを日々使って、自分のワークスタイルに用途を見出そうと努力しています。正直に言うと、最初はPixel Cを普段からどのように使えば良いのかあまりイメージ出来なかったんですね。でも1日位経過すると、Pixel Cは素晴らしいサブデバイスであることに気づきます。まずPixel Cはラップトップの代わりにはなりません。単純に自分が行いたい作業を行うことが出来ないからです。TweetdeckやSlackを見たり、GIZMODOの記事を読む、ブログ記事をCMSに投稿する、同僚とHangoutで会話する、メールに返信する…いろんなアプリケーションをPixel Cで試してみましたが、言うまでもなくAndroid OSのPixel Cでは思うようにこなすことが出来ません。

僕はこんな風に使い道を見出しました。Pixel Cをデスクに置いてGmailを開いておくと、常に受信ボックスがひと目で見れる状態になります。(通常はメインPCで作業している)大量のメールタイトルをクリックするよりも、Android端末でEメールをスワイプで処理する物理的な動作を好む僕のような人間にとっては、これは良かったです。キーボードのおかげで、必要に応じて返事も即座に書けます。

以上、これがPixek Cで出来ることです。グーグルは、Pixel Cをラップトップの代わりにする提案をできていません。でもタブレットでが仕事ができないというわけではなく、デスクでラップトップの隣に置いて便利に使うことくらいはできました。

さて、もう少しだけPixel Cのキーボードについて話しておきましょう。驚くことに、思った以上に使い難いですからね。写真を見るかぎり、そしていろんな人が綴るPixel Cのファーストインプレッションを読む限り、Pixel Cのキーボードには文字通り苦痛な要素がたくさんあります。10.2インチのスクリーン、ということはつまり、キーレイアウトも同様に10.2インチのスペースに詰め込まれるわけです。タイピングしている間「快適なタイピングとは何だったっけ」と思うくらい手を縮めないといけません。Pixel Cで長めのメールやレビューをタイピングしている間(このレビューのような)、かなり手首が痛くなりました。

とはいえ、このサイズの制限があるわりにはキーレイアウトはまずまず実用的。全てをフィットさせようとすると、EnterボタンとShiftボタンの位置が微妙になり、そしていくつかのエクストラキーはデジタル化されています。でも大丈夫、これらはそれなりに機能します。そして大きな問題は、トラックパッド的なものが存在しないことです。最初はとにかく苦痛でしたが、でもスクリーン全体がトラックパッドであると認識を改めれば、スクリーンを素早くタップする動作に慣れてきます。文字をコピー&ペーストしたい時には、ものすごくトラックパッドが必要になりますけどね。

Pixel Cレビュー:ハイブリッド端末にAndroid OSは機能しきれていない

現在発売されているAndroidタブレットの中でもかなり気に入っている!…という風に思えるのであれば問題ありません。他の作業用途的に作られているAndroidタブレットと違って、グーグルはシンプルにPixel Cをデザインしていると思うし、最初は少し混乱しますが、使い続けると強固なマグネットのアタッチメントや非接触式充電、USB Type-Cのポートなどには大満足です。このサイズのタブレットにしては、バッテリー寿命も極めて良好。サブデバイスとして使うなら、1回の充電で丸一日余裕で持ちます。Netflixを見続けたとしても9時間近くは持ちます。

このガジェットにおいては、Androidのネガティブな面を浮き彫りにしてしまったと思います。Android OSが機能しきれていません。多少の機能修正があっても時間がかかりそう。Chrome OSとAndroid OSが連携するという噂が本当なら、ものすごく改善されると思います。

Pixel Cのキーボード入力のタイムラグに耐えられないというレビューもいくつか見受けられました。が、自分に関しては特にそれを感じていません。スクリーンを取り外して、もう一度付け直せば機能しますしね。今あなたが読んでるこのレビューも、一切のタイムラグなしに書けています。

いくつかの注目すべき機能があるけれど、たぶん、ノー。個人的には、Eメールをスワイプして、ミーティング中に簡単にメモをとるだけのマシーンとして自分のワークスタイルにPixel Cの用途を見出すことができましたが。650ドル(約8万円)は高いでしょう。この値段ならSurface 3が買えます。Surfaceならバリバリ仕事もできますね。もしくは、良い感じのChromebookも買える。とにかく見た目が良いAndroidタブレットが欲しくて、奇妙なマグネットデザインを気にしない(奇特な)人にだけ、Pixel Cはおすすめできるかな。ほとんどの人は、他の製品を検討した方が幸せです。

Pixel Cのスペック

OS: Android 6.0 Marshmallow

ディスプレイ: 10.2インチ LCD 2560x1800 (308 PPI)

CPU: Nvidia Tegra X1

RAM: 3GB

ストレージ: 32GB、64GB (追加容量オプションなし)

重量: 517グラム (キーボード装着時は916グラム)

カメラ: 背面カメラ:8メガピクセル、フロントカメラ:2メガピクセル

バッテリー:34.2 Whr

その他:USB Type-C

Darren Orf - Gizmodo US[原文]

(mayumine)