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テスラのロボット「Tesla Bot」のデモは、新技術発表にまつわる“真実”を示している

ラスヴェガスで開催される世界最大級の家電見本市「CES」に足を運んだことのある人なら、十分に理解できるだろう。巻き取り式のディスプレイ、インテリジェントな外骨格スーツ、掃除ロボット、自律走行車など、どれを見てもうまく機能しているように見える。だが、ほとんどは売れないものばかりで現実味に乏しいのだ。

拡張現実(AR)技術を開発するマジックリープは2016年、体育館の床でヴァーチャルなクジラが水しぶきを上げ、スタンドにいる子どもたちが歓声を上げるヴィデオ映像を公開している。これもまた、見かけ倒しだった。

かつてサムスンは、「スマートフォンのカメラ」のデモと称してデジタル一眼レフカメラで撮った写真を披露したことがある。アップルのデモは、いまでこそ世界のごく一部の人々だけが維持できるようなライフスタイルを提案したり、ガジェット間のシームレスな連携を約束したりと、人為的なところがほとんど見当たらない。だが、iPhoneを初めて披露した際のデモは、完全に“つくりもの”だった。

そして、19年11月に初公開されたテスラの電動ピックアップトラック「Cybertruck」である。このクルマは最初のデモこそ見事なものだったが、発売時期は2022年まで延期されている。

テスラのロボット「Tesla Bot」のデモは、新技術発表にまつわる“真実”を示している

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テック企業が売る「素晴らしい未来」

もちろん、これらの製品のなかには実際に発売されるものもある。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)や世界的なチップ不足の年はさておき、毎年同じ時期に発売されている。だが、テック企業がデモで売り込んでくるのは、そういった類の製品ではない。友人があなたのデートをお膳立てするとき、「時間に正確な人だよ」なんて言わないのと同じなのだ。

こうしたテック企業が売り込んでいるのは「素晴らしい未来」である。それはもしかすると、いわゆる「不気味の谷」を越えるための橋渡し的な存在になるのかもしれない。テック企業はわたしたちの人間性を深めてくれるようなものを、テクノロジーという名のもとに売っている。ただし、その謳い文句を受け入れていればの話だ。

それにしても、あの冗談が通じていればいいのだが。踊るロボットのデモは“本物”ではなかったが、いつかは「本物」になるだろう。ロボットの中の人間は「本物」だったが、いつしか“本物”ではなくなる日が来るのかもしれない。

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TEXT BY LAUREN GOODE