07

Mar

大量の残置物でも恐るるに足らず!? 強制執行の荷物運びだし業務を請け負う会社に聞く Part.1

ゴミ屋敷のように、残置物がたくさん残っている物件を購入するのは心理的にハードルが高い。あまりの荷物の多さに、処分費がいくらかかるのかわからず、怯んでしまうからだ。

しかし、だからこそ競争相手が少ないとも言えるだろう。大量の残置物を安く、スムーズに撤去できるノウハウはないのだろうか?

入居者が夜逃げした物件の残置物を撤去する業者(強制執行の補助業務の遂行業者)に、話を聞いてみた。

残置物の中で、買取してもらえるモノはないか?家具、家電、ブランド物や貴金属なら可能性あり!

以前、入居者が夜逃げしてしまい、物件が強制執行になってしまった物件を紹介した。

この後編記事で、強制執行を断行する執行官を補助する業務(荷物の運び出し)をしていたのが株式会社リリーフだ。同社の営業部長 須々木良隆氏に話を聞いた。

同社はグループ会社にリサイクルショップを持っている。ゴミ処理の査定時に、買い取りの査定もしてくれるそうだ。

オーナー自らがリサイクルショップに持ち込まなくても良いのは便利だろう。

では、買取のをしてもらえるものとはどんなものか?と聞くと、家電、家具、ブランド物や貴金属だそうだ。

〇家電

電子レンジや洗濯機、テレビなど。

日本製で、製造から5年以内であれば高く買い取ってもらえる可能性が高い。

ハイアールやハイセンスなどの海外製品や、ニトリなどのオリジナル家電などは、買取不可ではないが、買取価格は安くなるそうだ。

〇家具

タンスやテーブルなど。おしゃれでも、IKEAやニトリの組み立て家具は値段がつかないそうだ。

組み立て家具の場合、ネジ山が合わない、既に壊れている等、もう一度組み立てようとすると不具合が発生してトラブルになるからだ。

却って、古い大型タンスの方が、値段がつく場合があるらしい。

民泊をしていた部屋を撤退する際の家具の回収も請け負っているそうだ。しかし、民泊で使われているベッドなどは海外製が多く、値段がつかないことが多いようだ。

他にも、時間貸の「貸し会議室」を運営していた場所を撤退する際、机や椅子を回収することもあるそうだ。

この場合も、コクヨなど日本製の机や椅子なら買取できるが、海外製の場合は難しいという。

残念ながら、安く買ったモノは高くは買い取ってもらえないということだ。

最近は、商業地でのカフェ撤退や、インバウンド客向けの食べ放題の店の撤退などもコロナ禍で増え、片付けの依頼が多くなったそうだ。

買取したモノは、自社のリサイクルショップで販売するモノもあるが、コンテナに積んで海外に持っていくモノもあるという。海外では「日本製」であれば信用が高く、売れるそうだ。

コロナ禍で、海外ルートが止まっている為、買取が難しい場合もあった。現在は少しずつ海外ルートが復活し始めているようだ。

〇ブランド品や貴金属

ヴィトンやグッチ、シャネルといったカバンや時計や宝石、貴金属など。

ちなみに着物は需要がなく、同社ではゼロ円で引き取りするだけらしい。

大量の残置物でも恐るるに足らず!? 強制執行の荷物運びだし業務を請け負う会社に聞く Part.1

テレビコマーシャルでは、着物の買取を派手に宣伝している会社があるが、彼らはどこに売るのだろうか?

残置物処分費用は業者によって違う。「相見積もり」は必須!

では、売れるモノ以外の残置物の撤去費用を安くするには、どうすればよいか?

「ゴミの量を可能な限り自分で減らしてから、撤去の査定をしてもらうことです」と須々木氏。

〇まずゴミを分別する。

〇その地域のゴミ分別を調べ、ゴミシールを貼って、捨てられるものはなるべく捨てる。

〇車を持ってる場合は、自分で地域のゴミステーションに捨てに行く。

〇金属などは分けて、金属を買い取ってくれる所に持ち込む。

〇ジモティーなどを使って、「無料であげます」にして引き取ってもらう。古い畳などでも、引き取り希望者がでてくる場合がある。

〇ゴミ処理のプロに引き取ってもらう量を最大限少なくしてから、撤去の査定をしてもらう。

残置物処分の業者に見積もりを頼む際、相見積もりは取った方がいいとのことだ。

なぜなら、業者によって、ゴミ処理の算出方法が違う。

ゴミの量に、スタッフの人数や車両代をプラスして計算する業者もあれば、ゴミの量だけ(人件費や車両代は含む形)で計算するところもあるそうだ。

例えば同社の場合、ゴミの量だけで処分費を決めるそうだ。1トントラックいっぱいに積む量なら、約4万円プラス消費税。

スタッフに2、3人が行って、1時間ぐらいで搬出から積み込みまでを完了させる。

2トントラックいっぱいで約7万円プラス消費税。スタッフ2、3人が行って2時間ぐらいで完了する程度。

ただし、ゴミの量や状況にもよる。18平米のワンルームマンションでも、2トントラックいっぱいの残置物になる場合もあるからだ。

衣類や日用品などを、大きなビニール袋に入れて詰め込んでみると、かなりの物量になるからだ。

依頼者からの要望があれば、亡くなった人の大切なものをお寺で焼いてもらう「お焚き上げ」や、仏壇の「魂抜き」なども対応するそうだ。神棚があれば、神社へ返納したりする場合もある。

最近は、人間のお骨だけでなく、ペットのお骨も多く、依頼があればペットのお骨もお寺に持っていって供養してもらうそうだ。

依頼者によっては、「魂抜きをしなくて良いので仏壇は捨ててくれ」と、あっさり言うタイプの人もいる。

どこまで気になるかは、本人次第ということだろう。

同社の場合、回収した残置物は一旦倉庫にすべて集め、分別する。

家電は通電テストなどして、状態の良いものは自社のリサイクルショップへ。

金属ゴミも金属ごとに分別し、食器もほとんど値段がつかないがまとめて業者に売ったりするそうだ。

ベテラン大家さんなら、大量の残置物があっても、トラックを手配してすべて自分で処分する事もできるだろう。

しかし、トラックをレンタルするにも費用がかかる。

サラリーマンとの兼業で時間がなかったり、体力に自信がない人や腰痛などがある人の場合は、無理をせず、自分の時間や健康と秤にかけて、どの部分をプロに頼んだ方がいいか見極めることも必要だろう。

次回は強制執行補助業務の実際をお届けする。

健美家編集部(協力:野原ともみ)